変化球が生み出したのは、上村ひなのの成長だったーあなたにありがとう2021 2021年11月16日付
いつでもどこでも変化球を投げ続けるのは、相当の苦難が必要だ。
変化球の意義とは、次の球を相手に絞らせにくくすることにあるという。
だとしたら、上村ひなのが次にどう出てくるか、相手の予想を遥かに上回らないといけない。
それも、毎回だ。
こんなにプレッシャーのかかる話はない。
天然でそれができるならまだしも、フリップを出すタイミングが違ったと大泣きするような人がそんな天然であるはずもないし。
どこまでを計算してるのか。
その計算どおりになっているのか。
それは本人にしかわからない。
2021年の上村ひなのと言えば、やはり印象的なのは「何度でも何度でも」のセンター。
日向坂46において、ソロ曲とセンター曲の両方をもらえるメンバーというのは多くないわけで、いかに運営の期待がかかっているかがわかろうというものである。
この曲が高校生クイズの応援ソングであるということを考えたとき、同世代の彼女がセンターだと説得力は増す。そういう効果を狙ったものであったことは容易に想像がつく。
ソロ曲とセンターを務める曲とは、おそらく似て非なる苦悩があるとみる。
どちらも、誰もが憧れるという側面がある一方で、ソロ曲は全責任が自分にかかることになるし、センター曲はその曲におけるグループの「顔」としての役割が求められる。
全国ツアーで披露された「何度でも何度でも」における彼女のセンターは、実に堂々としたものであり、そして新たな日向坂46の方向性を感じさせるものだった。
「いつでもどこでも変化球 ひなのなの」
いつでもどこでも変化球と自分を縛ることによって、この3年で彼女が手に入れたものは何だろう。
まさしく変化球のように、様々な局面に対応できる力。
それも、発想が少し常人離れしたところから発揮される力。
彼女は、自分がアイドルには向いていないという。
そんな自分がアイドルをしていることそのものが、もしかしたら変化球なのかもしれない。
でもそれは言い方を替えれば、他のアイドルにない強みを持っている、とも言えないだろうか。
愛されキャラでもあり、唯一無二性もある。
アイドルに向いてないどころか、個性という店では他のアイドルを凌ぐのではないだろうか。
2022年。
次に彼女が見据える先には何があるのだろう。
もちろん変化球もいい。
だが、彼女の投げる「直球」にも興味はある。
直球が生きれば生きるほど、変化球も映えるのだ。