感動の裏側にある、考えるべきことー日向坂46、5thヒット祈願を通して 2021年5月27日付
5月26日、日向坂46が5枚目シングル「君しか勝たん」をリリースしました。
他のグループは存じませんが、坂道Gの伝統としてあるのが、毎シングル発売ごとに行われる、ヒット祈願。
体を張る類のものが多く、スタンダードなのは登山だったり滝行だったり寺の修行だったりというところですが、乃木坂や欅坂櫻坂と比べて、日向坂のヒット祈願はバラエティーに富んでいます。ひらがなけやき時代はバンジージャンプがあり、日向坂になってからは駅伝だったり、ドラゴンボートだったり、釣りだったり、ワンカットPVだったり、女子高生を元気づける、なんてのもあったりしました。
その大きな特徴は、やはり「全員で成し遂げること」。
全員選抜ということとも繋がる話なのもしれませんが、とにかく全員で参加して達成する、というのが大前提にあるような気がします。
今回の5thヒット祈願は、チアリーディング。
それも約1ヶ月でその動きをマスターして、最後は生配信で披露する、というものでした。
日向坂メンバーのひたむきで、真っ直ぐで、困難なことでもみんなで力を合わせて立ち向かえば必ず達成できると信じる心、そして自分たちに関わってくれた人たちに対する深い深い感謝の念。これは綺麗ごとではなくそれを体現させてきたからこそ、ある意味ここまでの地位を築いてきたのだと思います。
だから今回も、それをフルに魅せてくれようとしてました。それはとても強く伝わってきてました。
とはいえ。夢を見せてくれる彼女たちにも現実の波は容赦なく襲います。
日向坂の名前が売れれば売れるほど、仕事が入る。そんな状況を、彼女たちは心から感謝していると思うし、何事も全力で当たろうとする。そうなると、相当時間のない中で、難しいチアの動きをマスターする、或いはアクロバティックな動きをマスターする、ということにも全力で立ち向かおうとします。
それが、いかに体や心に負担を強いるか。
彼女たちも私たちと同じ一人の「人間」であり、そうである以上やはり目を向けないといけない部分でもあるのです。
体にはダメージが残る、そしてもっと怖いのは目に見えない、心が受けるダメージです。多忙を極める中でできないことももしかしたらあるかもしれない。でもそれを、時間のなさという部分で言い訳にしてくるメンバーは、おそらく一人もいないでしょう。
彼女たちが素直で、忠実だからこそ、完璧にこなそうとする。
それが怖いのです。
折りしもその前日、5月25日に佐々木美玲さんが1週間程度の入院が必要との診断が成され、しばらくの間休養することが発表されました。
「佐々木美玲 休養のお知らせ」#日向坂46https://t.co/EkTt1IyZOKhttps://t.co/lF4WM4tKdJ
— 日向坂46 (@hinatazaka46) 2021年5月25日
彼女たちを知る誰もが考えることですが、当然これはみーぱんがいちばん悔しいだろうと。
私もそう思います。
何度か握手会に並んだことがありますが、楽しんで帰ってもらいたいというのが強く表れていて、いや、日向坂のメンバーは基本的にそうなんですが、みーぱんもそんな姿勢が強いメンバーの一人です。
おひさまに気を遣わせたくない、それはとても伝わります。
休養が公式に発表された後、自身でブログもあげてましたが、努めてこちら側に気を遣わせないように、というブログだったと思います。
そんな現実も踏まえての、生配信披露。
感動しました。確かに。
練習時間は限られ、そのうえ多忙が続くメンバーにとっては逆境しかない中でのパフォーマンス。
成功とか失敗とか関係ない、という意見もありましたが、これは私は言う気はありません。それは、そこを目指して力を尽くしてきたメンバーに失礼だと思うからです。
関係なくはないんですが、ただそれを超えた感動をもたらしくれたのも、また事実ではありました。
TLも結構感動の嵐だった、それは私も存じ上げています。
それはそれとして。
ヒット祈願全体に言えることではあると思うんですが、メンバーを極限にまで追い込んで、ある意味逆境を与えてそれを乗り越えさせる、もちろん大切なことなのかもしれませんが、「その後」のケアまでしっかりと考えられているのでしょうか。
センター加藤史帆の多忙は傍目にもわかりますし、今回もおよそ万全とは言えない状況だったと思います。みーぱんの休養はそこに原因があったのかわかりませんから敢えて言及はしませんが、他にも笑顔の裏側で結構満身創痍になってたメンバーもいたのではないでしょうか。
…これは、本当にいいことなんでしょうか。
いいこと、と言うと言葉として正しいかはわかりませんが、例えばおひさまの中に、感動は見せてほしいけど、彼女たちの体調を崩させてまで感動させてほしいとは思わない、という人だって確実にいるはずです。
これから6th、7thと続いていく度に、このヒット祈願が彼女たちの負担になりはしないか、もっと言えばここから先さらにハードルを上げて来やしないかということが私たちにとっても心配の種になってしまいます。
前述のとおり、彼女たちは素直だし、それが自分たちに必要だと納得すれば受け入れて取り組むでしょう。
彼女たちが頑張りたい、というのなら私たちのほうで止める術はありません。
だからこれは、本当に運営さんのセンスと、センスなどというエモーショナルなことだけでなく、コンプライアンス的な現実との兼ね合いが必要になってくると思います。
正直言えば、観てる私の方としては、日向坂のヒット祈願と聞くだけで少々怖いです。また極限まで追い込むようなことを強いられるのか、という想いが頭をもたげるからです。
だから強くお願いしたい。
私なんかに言われるまでもないとは思いますが、どうか彼女たちの心と体のケアを宜しくお願いします。
推しメンが「努力の天才」という話をしてましたが、日向坂のメンバーなんてみんな努力の天才だと思っています。何より心が本当に強い。
けれどその強く見えても、ある意味脆い部分だって必ずあるし、その部分が前に出過ぎてしまうことだって心のバランス的に十分考えられます。
総体としては前を向いていたとしても、心に去来するものは差があって当然ではないでしょうか。
本番終了後も、泣いていたメンバーと泣いてないメンバーがいたことは、そのことを改めて思わされます。
もちろん全員泣いて、とか、全員泣くな、ということが言いたいわけではなく、人によって差異があるのは当然だということです。
私たちは、推しメンたちが心から楽しんで活動してくれる、そんな姿を見ることが最も望みなのです。
感動もいい。もちろんいいんだけど、極限に追い込んで得られる感動には、正直違和感もあります。
6th以降のヒット祈願は、どうか運営さんのバランス感覚を発揮したものとなりますように願っております。